エラスチンのヒト血管に対する有効性
方法
健常な40歳以上64歳以下の日本人男女に対して、カツオエラスチン配合サプリメント摂取による血管への影響を評価しました1)。スクリーニング基準は血管弾性の指標であるPWV(脈波伝播速度)が各年代および性別における基準範囲内の者とし、試験はプラセボ対照二重盲験並行群間比較試験法により行いました。エラスチン群は有効成分として1日あたり「カツオエラスチン」75mgを、プラセボ群は有効成分を含まない錠剤を摂取しました。試験期間は16週間とし、観察日を摂取前、摂取4週間後、摂取8週間後、摂取12週間後、摂取16週間後の計5回とし、FMD(血流依存性血管拡張反応)、PWVを評価しました。また、実際の使用者の体感評価について、アンケート調査を行いました。統計解析は全例解析に加えて、摂取前PWVの基準内低値、基準内高値での層別解析を行いました。
結果
血管内皮機能の指標としてFMD検査により血管拡張率を比較した結果、全例解析では摂取12週間後にエラスチン群はプラセボ群と比較して改善の傾向がみられました(図1)。層別解析では、PWV基準内低値者においては両群ともに群内および群間における有意な変動は確認できませんでしたが、PWV基準内高値者では摂取12週間後にエラスチン群はプラセボ群と比較して有意な改善がみられました(図1)。
血管弾性の指標としてPWV検査により脈波伝播速度を比較した結果、全例解析では摂取16週間後にエラスチン群はプラセボ群と比較して有意な改善がみられました(図2)。層別解析では、PWV基準内低値者においては両群ともに群内および群間における有意な変動は確認できませんでしたが、PWV基準内高値者ではエラスチン群において摂取4週間後、摂取8週間後に摂取前から有意な改善が確認され、摂取4週間後、摂取8週間後、摂取16週間後にエラスチン群はプラセボ群と比較して有意な改善がみられました(図2)。
血管のしなやかさや血流が関与していると考えられる項目についてアンケート調査を行いました。各項目の点数の平均値を計算し、摂取前を100%として各群の摂取4週間後、摂取8週間後、摂取12週間後、摂取16週間後の比較を行いました。エラスチン群とプラセボ群を比較した全例解析では、摂取期間中に「手足の冷え」「腰痛」「疲れやすさ」「目の疲れ」「イライラ感」「物忘れ」「体調の悪さ」に関してエラスチン群はプラセボ群と比較して有意な改善がみられました。層別解析のPWV基準内高値者においてエラスチン群とプラセボ群を比較すると、「腰痛」「疲れやすさ」「目の疲れ」「物忘れ」に関してエラスチン群はプラセボ群と比較して有意な改善が全例解析よりも顕著にみられました。一方、プラセボ群では全例解析、層別解析ともにエラスチン群のような体感の改善はみられませんでした(図3)。
体感アンケート
まとめ
カツオエラスチン経口摂取によるヒト血管への効果に関する試験において、FMD(血流依存性血管拡張反応)については全例では改善傾向がみられ、PWV基準内高値者では有意な改善がみられたことから、血管内皮機能への改善作用が認められました。また、PWV(脈波伝播速度)については全例、PWV基準内高値者ともに有意な改善がみられ、カツオエラスチンの摂取による血管弾性の改善効果が認められました。さらに、FMDとPWVの改善作用はPWV基準内高値者において顕著な効果が示されました。
今回のアンケート調査ではPWV基準内高値者において「腰痛」「疲れやすさ」「目の疲れ」「物忘れ」の有意な体感が全例と比べて顕著に認められました。「手足の冷え」「腰痛」「疲れやすさ」「物忘れ」のような愁訴はPWVとの有意な関連性が報告されていますので2), 3), 4)、カツオエラスチンを1日75mg経口摂取することで血管状態が改善したと言えます。
補足
FMD(血流依存性血管拡張反応)
血流依存性血管拡張反応(flow mediated vasodilation:FMD)検査は血管内皮機能評価の検査として近年注目されています。FMD検査では腕を圧迫して止血し、止血前後の血管径を超音波により計測して血管拡張率を算出します。血管拡張には血管内皮から産生される血管拡張物質(一酸化窒素:NO)が関与しており、血管内皮機能が衰えていると血管拡張率の低下が起こります5)。
PWV(脈波伝播速度)
脈波伝播速度(Pulse Wave Velocity:PWV)検査は心臓からの拍動(脈波)が伝わる速度から血管の硬さを評価する検査です。PWV検査は症状が出る前の早期段階の動脈硬化の検出に役立っており、人間ドッグなどでも採用されています5)。血管がしなやかな場合では脈波が血管壁で吸収されて脈波速度が遅くなりますが、血管が硬化している場合では脈波が血管壁で吸収されにくいので脈波速度が速くなります6)。