ヒシエキスの抗糖化活性について
ヒシエキスが持つ抗糖化活性として以下の3点が明らかになっています。
Ⅰ.血清アルブミン・コラーゲンの糖化抑制作用
Ⅱ.ペントシジン・CML・3DGの生成抑制作用
Ⅲ.糖化タンパク質の分解作用
Ⅰ.血清アルブミン・コラーゲンの糖化抑制作用
方法
ヒシエキスのタンパク質に対する抗糖化作用を調べるため、ヒト血液中に含まれる血清アルブミン(Human Serum Albumin:HSA)と、コラーゲンに対する糖化反応抑制試験1) を行いました。 グルコース、HSAまたはコラーゲンと、試料(ヒシエキス、アミノグアニジン※1)を加えた反応液を、60℃で30時間反応させ、生成した糖化反応生成物量をAGEsの蛍光値を指標として測定しました。 ※1 アミノグアニジン:糖化反応阻害剤
結果
ヒシエキスは、アミノグアニジンよりもHSAおよびコラーゲンの糖化を強く抑制することを確認しました(図1)。
図1 ヒシエキスのヒト血清アルブミン・コラーゲンの糖化抑制作用
Ⅱ.AGEs(ペントシジン・CML)および3DG生成抑制作用
ペントシジンとCML(カルボキシメチルリジン)は生体における主要なAGEsの一種であり、加齢に伴いヒトの皮膚に蓄積することが知られています。3DGは糖化反応中間体の1種で、グルコースよりも反応性が高く、急速にAGEs形成を促進させるといわれています。2)
ヒシエキスによる、これらAGEs(ペントシジン・CML)および3DGの生成抑制作用を調べました。
ペントシジン生成抑制試験
方法
グルコース、HSAに試料(ヒシエキス、アミノグアニジン)を加えた反応液を60℃で30時間反応させ、生成したペントシジンをELISA法にて測定し、各試料のペントシジン生成抑制率を算出しました。
結果
ヒシエキスによる、HSA中のペントシジン生成抑制作用が確認されました。また、ヒシエキスはアミノグアニジンよりも高いペントシジン生成抑制作用を持つことが明らかとなりました(図2)。
図2 ヒシエキスのペントシジン生成抑制率
CML生成抑制試験
方法
グルコース、HSAおよび試料(ヒシエキス、アミノグアニジン)を加えた反応液を60℃で30時間反応させ、生成したCMLをELISA法にて測定しました。
結果
ヒシエキスによる濃度依存的なCML生成量の抑制が確認されました。また、ヒシエキスはアミノグアニジンよりも高いCML生成抑制作用を持つことが明らかとなりました(図3)。
図3 ヒト血清アルブミン中のCML生成抑制作用
3DG生成抑制試験
方法
ヒト血清アルブミン、グルコースおよび試料(ヒシエキス、アミノグアニジン)を加えた反応液を60℃で30時間反応させ、生成した3DGをHPLCにて測定しました。3,4)
結果
ヒシエキス添加による濃度依存的な3DG生成量の低下が確認されました。また、ヒシエキスはアミノグアニジンよりも高い3DG生成抑制作用をもつことが明らかとなりました(図4)。
図4 ヒト血清アルブミン中の3DG生成抑制作用
Ⅲ.糖化タンパク質分解作用
糖化タンパク質は代謝されにくく、体内に蓄積されやすいことが知られています。AGEs沈着量の増加は、皮膚弾力性の低下や腎症などの疾病への関与が指摘されています。5,6) そこで、ヒシエキスによる糖化タンパク質の分解作用について検証しました。糖化タンパク質の分解作用は、ジカルボニル化合物のジカルボニル結合切断活性を検証する方法と、AGEsが形成する糖化架橋の切断能を検証する2通りの方法から検証しました。
ジカルボニル結合切断活性の検証
方法
ジカルボニル化合物とは、構造内に反応性の高いカルボニル結合を2つもつ化合物の総称を指します。糖化生成物では、反応中間体である3DGやグリオキサールがこれにあたります。 ジカルボニル結合をもつモデル化合物にPPD(1-Phenyl-1,2-propanedione)を用い、試料を反応させて遊離した安息香酸量を測定し、結合の切断率を算出しました。7) 試料は、ヒシエキスと、陽性対照としてPTB(N-Phenacyl thiazolium bromide)※2 およびカテキン※3 としました。 ※2 PTB:ジカルボニル構造の切断活性をもつ化合物 ※3 カテキン:ポリフェノールの一種。ジカルボニル構造の切断活性があることが報告されている。
結果
ヒシエキス添加により、濃度依存的に遊離安息香酸量が増加することが明らかになりました。このことから、ヒシエキスはジカルボニル結合を切断することで、ジカルボニル化合物を分解する可能性が示唆されました(図5)。
図5 ジカルボニル化合物分解作用
AGEs架橋切断作用の検証
方法
糖化ウシ血清アルブミン(AGE-BSA)をコラーゲンコートプレート上でインキュベートし、コラーゲンとの間にAGEsによる架橋(コラーゲン-AGE-BSA)を形成させます。ここに、試料としてヒシエキスもしくは陽性対象のPTBを添加し、架橋の切断反応を行います。反応後、切断され遊離したAGE-BSAを除去し、残存するAGE-BSAを、抗BSA抗体を用いたELISA法にて測定し、AGE-BSA残存率を求めました。8)
結果
ヒシエキス添加により濃度依存的にAGE-BSAの残存率が低下することが確認されました。また、陽性対照のPTBとの比較から、ヒシエキスはPTBよりも高いAGE架橋切断作用をもつことが明らかとなりました(図6)。
図6 ヒシエキス添加後のAGE-BSA架橋残存率
参考文献
1) アンチエイジング・ヘルスフード p125-133(メイラード反応と抗糖化天然資源)
2)蛋白の糖化 AGEの基礎と臨床 p28,p57
3)DOJIN NEWS 98 (2001)
4)J Biol Chem., 269(32), p20275-80 (1994)
5)Anti-Aging Medicine 8 (3): 23-29,(2011)
6)Anti-Aging Medicine 7 (10): 112-119,(2010)
7)Biosci. Biotechnol. Biochem., 76(10), p1904-1908, (2012)
8)Nature,382(6588), p 275–278 (1996)